Excelで公文書を作る、という選択肢
Excelは計算をするソフトで、文書を作るのはWord—そんな思い込みを持っていませんか?
「思い込み」を捨てるだけで、煩雑な事務仕事が驚くほどシンプルになります。
今回は、多くの人がWord(もしかして一太郎?)で行っているであろう、文書の作成(特に派遣依頼などの公文書)をExcelで行う方法について解説します。
文書を作るのはWordの方が得意でしょ?
一枚の文書を作るのなら、当然ExcelよりWordの方が得意でしょう。Wordは文書作成ソフトなのですから。全員に同じものを配付するような文書なら、私もWordで作ります。
今回紹介するのは、文書作成にExcelの得意分野であるデータ処理を付加したものです。
Excelの方が作りやすい場合とは?
Excelの方が作りやすい場合とはずばり、「同じ内容の文書を、所属と名前の違う複数の人にメールで送るとき」です。若いうちはこういったことは少ないかもしれませんが、ある程度経験を積んで「〇〇委員長」とか「××事務局長」などといった役職につき、大会や研修、会議を主催する側に回るとこういう作業をする機会がぐっと増えます。「今はそんな役職についてないし」という人も、今のうちに身に着けておくべきスキルです。
どうしてExcelの方がいいの?
2種類の文書が同時に作れる!
派遣依頼文書を作る場合、「本人宛」と「所属長宛」の2種類が必要になります。一人につき2枚の文書を作るのはものすごく手間がかかります。Excelファイルで設定しておけば、テンプレートさえできてしまえばワンタッチで2種類の文書が同時に作れます。
Excelで文書を作ればミスが減らせる!
文書をWordではなくExcelで作ることのメリットは、「煩雑な繰り返し作業を避けられる」ことです。たまに派遣依頼等の公文書を、「一人ひとり別のWordファイルで作る」人や「同じ内容を何十ページにも渡ってコピーして手作業で宛名を打ちかえる」人がいますが、そういうのは一番やってはいけないやり方です。作業が煩雑になって時間がかかる上に、何度も同じような作業を繰り返すうちに必ずミスが起こります。発行した公文書にミスがあると、自分だけでなく学校や委員会、部会等の信用を落とすことにもなりかねません。かといってミスをチェックするためだけに何度も見返すのも時間の無駄です。Excelで文書を作ることによって、この手間を大幅に削減することができます。
均等割り付けに悩まされない!
あと、Wordで公文書を作っていて地味にイライラするのが 「均等割り付け」です。文書番号と日付、校名と役職+氏名などは均等割り付けをするのが基本ですが(自治体にもよる)、これがWordではときどきうまくいかない、ということもあるのではないでしょうか。もちろんWordに習熟してしまえば解決できるのですが、均等割り付けに関してはExcelの方が数段簡単に設定できます。操作は下の通りです。
右クリック→セルの書式設定→[配置]タブ→文字の配置→均等割り付け
そうは言ってもExcelで文書なんか作ったことないし…
はい、そういう人のためにサンプルファイルを用意しました!簡単に使えるファイルなので、一度ダウンロードしていじってみてください。触ってみれば使い方は分かると思いますが、一応説明しておきます。
名簿シート

学校名や役職、氏名等を個別に入力するシートです。このデータを組み合わせて他のシートに反映させていきます。
本人宛シート

文書のメインとなるシートです。文書番号や日付、内容等を打ち込みます。右上の大きな数字は先ほどの[宛名シート]のA列(ピンク色)に連動しており、ここの数字から自動的に宛名(黄色部分)が入力されます。
所属長宛シート

こちらのシートの黄色部分は自動で完成します。文面さえ作ってしまえばおしまいです。
送信するときの注意
こういった形の公文書(派遣依頼)を受け取るのに慣れていない人も多いでしょうから、初めて送る相手には使い方を連絡する必要があります。例えば以下のような文面です。
派遣依頼はエクセルファイルになっています。「本人宛」「校長宛」「名簿」の3つのシートがありますので、まず「名簿シート」でご自分の名前を探していただき、左側にある番号を確認してください。その番号を「本人宛」シートの右上の大きな数字のところに入力すると「本人宛」「校長宛」の派遣依頼が完成しますので、それぞれ印刷してお使いください。お手数ですがよろしくお願いします。分からない部分があれば〇〇までご連絡ください。
パソコンが苦手な人は自分の派遣依頼を作れないかも、と思われるかもしれませんが、そんな心配は無用です。私はこの形式で20代の講師から50代後半の校長、再任用の講師にまで数多くの派遣依頼を送ってきましたが、「分からない」という連絡がきたことは一度もありません。万が一分からない人がいたとしても、その人が隣の先生に聞けば解決することです。
宛名を変えるなら「差し込み印刷」があるじゃん。
差し込み印刷を使いこなしている人であれば、当然このように考えると思います。しかし、そういう人こそ差し込み印刷のデメリットも分かっていることでしょう。いくつか挙げてみます。
差し込み印刷は「印刷して渡す」ことを前提にしている
当たり前ですが、差し込み印刷を使うと「同じ内容の文書を、宛名だけ変えて印刷する」ことができます。ただし当然のことながら、印刷した文書は郵送やFAX(!)等の方法で受取人のところまで届けなければなりません。これからの時代、わざわざ作ったデータを印刷して時間とお金をかけて届けるなんていう非効率なことをいつまで続けるのでしょうか。仕事のできる人間ならば、郵送するまでもない(公印を省略できる)文書なら、相手にメールで届けて相手側で印刷してもらうでしょう。その方が時間もコストも削減できますし、履歴が残りますので「送った、受け取っていない」などのトラブルも防げます。
差し込み印刷はExcel、Word両方のファイルが必要
差し込み印刷をするときには、Wordで作った元の文書と、それに「差し込む」ためのExcelデータ表が必要になります。自分で作った文書であればWord文書とどのExcelデータが連動しているかは(少なくとも作った時には)把握できていますが、 仕事を次の人に引き継ぐときに分からなくなってしまったり、 自分で作ったものでも時間が経つと忘れてしまったり、というのはよくあることです。差し込み印刷を使用している文書では、連動しているExcelファイルを削除・移動したり名前を変更したりするともうそのリストは使えなくなってしまいます。差し込み印刷を使った文書ではありがちなミスですが、こうなるともう文書を一から作り直すしかありません。もったいない。
終わりに
私がこのような形式で公文書(派遣依頼)を作るようになったのは、ひとえに業務の効率化が目的です。Wordでちまちまと一人分ずつ派遣依頼を作っても、Excelで一気に片づけてしまっても、起こる結果は同じです。事務処理がきちんとできて、呼んだ人が会議に来てくれればいいのです。 公印はすべての文書に押すべきだ、とか、印刷までして郵送してあげた方が丁寧で良い、などと言うのはただの自己満足だと思います。できる限り公文書はメール送信で済ませるべきです。時間もかからないし、履歴も残ってトラブルも未然に防ぐことができます。全ての仕事を自分でしようとすると業務量が膨大になり、どこかで必ずミスが発生します。ほんの少しの手間を受け手側にかけてもらうことによって処理がスムーズになり、かかる時間も短縮されます。お互いにとって良いことだらけなのです。
いかがだったでしょうか。煩雑な事務処理を皆が少しずつ効率化していけば、全体としてはかなりの量の業務が削減できるのではないかと思います。効率化の波が少しでも広がっていきますように。
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