部活の顧問はしなくていい! 

部活の顧問って先生の仕事なの?

毎年2月くらいになると、「部活動希望調査」がありますよね。

多くの教員が「いやだな」と思いながらも現在持っている部活動や、学生時代に経験したことのある部活動の名前を書いているのではないでしょうか。上記のツイートの「文化部・運動部それぞれ一つ、ご記入くださ(い)」という文言にもあるように、学校には「教員は部活の顧問をやって当たり前」という空気があるように思います。

でも実は、教員が部活動の顧問をすべきという法的根拠はありません。

部活はやらなくていいんです。こういった「調査」に対して「部活はやりません」と書いて出しても何の問題もないのです。とはいえ実際にそういうことをすると校長や教頭に呼び出され、「説得」やら「お願い」やらを長々と聞かされることになるかもしれません。そういった場合に「なぜ私は顧問をしないのか」を明確に説明できるよう、ポイントを押さえておきましょう。

顧問を断る根拠① 学習指導要領

以下に中学校と高等学校の学習指導要領総則を引用します。「部活動」がどういう扱いになっているか確認してみましょう。

学習指導要領 総則(高校)

学習指導要領 総則(中学校)

「部活動」は「教育課程外」の活動であると規定されているのです。「教育課程外である」とは簡単に言うと、「学校がしなければならない仕事ではありませんよ」ということです。

まとめ①
部活動は「教育課程外」なので教員の仕事ではない

顧問を断る根拠② 教育公務員の勤務時間

教員の勤務時間は、労働基準法をベースに各地方自治体の条例で定められています。
一例として筆者の勤務する自治体の条例を部分的に引用します。

職員の勤務時間は1週間当たり38時間45分とする。 日曜日及び土曜日は、週休日(勤務時間を割り振らない日をいう)とする 。任命権者は月曜日から金曜日までの5日間において1日につき7時間45分の勤務時間を割り振る。

また文部科学省は教員の時間外勤務についてこのように規定しています(詳しくはこちら)。

まとめるとこんな感じです。
①原則、時間外勤務はさせない。
②以下の業務に限り、臨時orどうしようもない場合のみ時間外勤務をさせてもよい
 ア:生徒の実習 イ:学校行事 ウ:職員会議 エ:災害対応

 言うまでもありませんが、部活はこれらには含まれません。

まとめ②
教員は勤務時間外に働かなくていい

顧問を断る根拠③ 仕事の優先順位

ところで、みなさんの学校の放課は何時でしょうか。15時半から16時くらいではないでしょうか。私の勤務する学校では曜日によっては授業が7時間あり、放課が17時前ということもあります。

皆さんは生徒が帰ってから勤務時間終了までの約1時間をどのように過ごしていますか?翌日の授業準備や小テストの採点、書類仕事や生徒対応など、やることは山のようにありますよね。

このように忙しい状況で放課後に部活をすることは可能でしょうか。無理やり詰め込めば1時間程度なら活動を行うことは可能かもしれません。

しかし、ここで最初に触れた「教育課程」の話を思い出してください。そもそも部活は教育課程に入ってすらいないのです。教員がどうしてもやらなければならない仕事ではありません。教員の本来の業務を差し置いてまで、部活をする必然性があるでしょうか。…ありませんよね。放課後に部活動の時間を長く取ろうと思えばどうしても勤務時間を超えることになります。2つ目に触れたように、教員は勤務時間外に働く必要はないのです。

まとめ③
教員は本来の業務で手一杯。勤務時間中に部活をする余裕はない。

顧問を断ろう!

ここまで教員が部活動の顧問をしなくていい理由について見てきました。

「部活をやらなくていい」ということについては納得していただけたと思いますが、それでも実際に顧問を断るとなるとハードルが高いものです。これまでに抑えてきたポイントを元に、具体的な断り方をシミュレーションしてみましょう。とは言っても3つのポイントを並べればいいだけなので内容としてはそれほど難しくありません。こんな感じでいかがでしょうか。

「部活動は教育課程外の活動です。教員がやらなくてはならない業務ではありません。どうしてもやれと仰るなら勤務時間内についてはお引き受けします。ただし、本来の業務を優先させていただきますのでどちらにしても部活動の指導はできません」

管理職は中高年なのでアタマの堅い人も多く、「皆やってるんだから」とか「誰かがやらないと回らないんだから」などの訳の分からない理屈を振りかざしてくることもあると思いますが、年度末(もしくは年度当初)の勝負に負けてはいけません。一旦顧問を引き受けてしまえばなし崩しに際限なく放課後も休日も働かざるを得ない状況になることは目に見えています。

この記事を読まれた皆さんが無事に顧問を断り教員本来の業務に専念することができたら、これほど嬉しいことはありません。

皆さんの健闘を祈ります!

補足:それでも顧問が断れそうにないときは

実は、部活動を学校業務から切り離すことは、国会ではすでに既定路線となっています。変形労働時間制を導入するための特別措置法の附帯決議という形で、「七 政府は、教育職員の負担軽減を実現する観点から、部活動を学校単位から地域単位の取組とし、学校以外の主体が担うことについて検討を行い、早期に実現すること。」と、明文化されているのです。

管理職が強引に顧問をやらせようとしてきた場合には、「部活動が地域単位の取り組みになることは既に決まっていますが、それについてはどのようにお考えですか」と逆に質問してみましょう。これにまともに答えられる管理職はほとんどいないと思います。怒って「もういい!」みたいな流れになればシメたものです(個人的に嫌われて他の業務に支障をきたしても責任は取れませんが)。