英語は2度も絶滅しかけた?

世界で最も多くの人が話している言語は何でしょうか。

そうです、英語です。

2019年現在、全世界で約12億7千万人の人が英語を話しているそうです。(こちらのサイトを参考にしました)

英語が世界で最も話されている言語であるのは現在では当たり前のことですが、その英語に絶滅の危機があった、ということは知っているでしょうか。しかも2回も、です。

今回はこの衝撃的な出来事について、英語の歴史も交えながら見ていきます。

英語の語形変化はなぜシンプルなのか、英語にはどうしてフランス語系の語彙が多いのか、そんな疑問にもお答えします。

(お断り)この記事は英語の歴史を初めて学ぶ人向けに書いたものです。省略した部分や簡略化した部分があります。ご了承ください。

英語はいつからあるの?

言語は突然生まれるものではありません。

大昔のことなのではっきりしない部分もありますが、一説によれば英語の歴史が始まったのは西暦449年と言われています。この年、ゲルマン人がブリテン島(イギリスのことです)に侵入しました。ブリテン島に侵入したゲルマン人のうち、大きな勢力を持っていたのがアングル(Angles)という部族でした。英語(English)は「アングルの言葉」という意味であり、イングランド(Engand)は「アングルの土地」という意味なのです。

赤い部分がブリテン島。英語の歴史は小さな島国から始まった。

1度目の危機

デーン人の侵入

793年、デーン人(Danes)がブリテン島に侵入します。デーン人とは世に言うヴァイキングです。彼らはスカンジナビア半島や現在のデンマークの辺りに住んでいて、集団で各地を襲い、侵略や略奪を行っていました。

デーン人の攻撃はすさまじく、850年頃にはブリテン島の約半分は彼らの手に落ちていました。このまま攻撃が続いていればブリテン島の言葉はデーン人の言葉、古ノルド語(Old Norse)に変わっていたかもしれません

アングロサクソンは敗走し、もはやこれまで、というところで立ち上がったのがアルフレッド大王でした。彼は果敢に戦い、デーン軍と和議を結びます。その結果、ブリテン島の北部と東部はデーン人の支配地域となり、南部と東部はアングロサクソンの土地として残りました。ブリテン島の南部と東部で話されていたのが現在「古英語」と言われている言葉です。

青い部分がデーン人の支配領域、赤い部分がアングロサクソンの支配領域(だいたいです)

デーン人の侵入がもたらしたもの

デーン人の土地とアングロサクソンの土地には境界がありましたが、当然彼らは交流を行います。デーン人は徐々にアングロサクソンに同化していきました。

異なる言語を話す人が意志を通じさせようとすると、どうしてもやりとりはシンプルになります。文法は細かい規則を無視するようになります。その結果、それまでの英語にあった単語の語形変化(「屈折」と言います)がなくなっていったと考えられています。

英語は他のヨーロッパの言語に比べて語形変化がシンプルですが、その理由はこんなところにあったのですね。

2度目の危機

ノルマンの征服

ここでも出てくるのはデーン人です。

911年、デーン人はフランス北部のノルマンディーに侵入します。翌912年、デーン人の首長ロロがフランス国王の臣下となりノルマンディーの地を与えられることで戦いは終わります。この地に住むことになったデーン人は以降「ノルマン人」と呼ばれることになります。

1066年、イギリス国王エドワードが死去します。英国貴族はエドワードの義弟ハロルドを国王に擁立しますが、当時のノルマンディー公ウィリアムがこれに異を唱えます。「エドワードは生前、私に王位を譲ると約束していた」と主張し、王位を要求し、イギリスに侵入したのです。ウィリアムは戦いに勝利し、ここに「征服王ウィリアム」が誕生しました。

この結果、イギリス社会の重要な地位は全てフランス語を話すノルマン人が占めることになりました。一方で被支配者のアングロサクソンは英語を話し続けたために、イギリスはフランス語と英語の二言語社会になったのです。

1204年、イギリス国王ジョンがフランスとの戦いに敗れノルマンディーの地を失ったことから、ノルマン人は故郷をなくしてしまいます。ノルマン人はイギリス国王とフランス国王のどちらに忠誠を誓うかの選択を迫られ、フランスとは対立していたこともあり、自分たちを「イギリス人」とみなすようになっていきました。こうして300年の時を経て、再び英語はイギリスの言葉になったのです。

国王ジョンがフランスとの戦いに負けていなければ、イギリスは「フランス語の国」になっていたかもしれませんね。

地図はだいたいです、またしても。

ノルマン人がもたらしたもの

ノルマン人による征服を通して、大量のフランス語の語彙が英語に流入することになりました。

英語本来の語フランス語系外来語
cow/ox(牛)beef(牛肉)
swine(豚)pork(豚肉)
sheep(羊)mutton(羊肉)

家畜と食肉を例にとってみると、家畜の世話をしていた(被支配者の)アングロサクソンの言葉は動物の名前に、その肉を食べていた(支配者の)ノルマン人の言葉(フランス語)は食肉の名前になって残っていることが分かります。

現代の英語にもフランス語を語源とする単語が多いのはこのためなのです。

まとめ

言葉は常に変わりゆくものです。

英語は2度にわたる絶滅の危機を切り抜け、その形を大きく変化しながら生き延びてきたたくましい言語なのですね。現代でも毎日のように新しい語彙がうまれ、一部の文法や単語は時代に合わない、堅苦しいなどの理由で徐々に姿を消しつつあります。100年後、1,000年後には英語はどのように変化しているでしょうか。想像してみるのも楽しいものですね。

参考文献

参考文献というか、今回の記事は『英語の歴史から考える 英文法の「なぜ」』(朝尾幸次郎著、大修館書店)を部分的に要約し、若干加筆したものです。

英文法がどんなきっかけでどのように変化し現在の形になっているのか、大変わかりやすく解説されています。非常に面白い本なので、ぜひ手に取って読んでみてください。英語を見る目が変わると思います。

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